ふみのや ときわ堂

季感と哀歓、歴史と名残りの雑記帳

原点思考のものがたり

ひとは、スイッチを押したら、立ちあらわれる、ホログラフィーじゃない。
いまこの瞬間に、パッとあらわれたわけじゃない。
生まれてからここまで、なにかに嘆き、なにかを期待され、だれかを見送り、なにかに打ちこみ、なにかを捨てて、ここまで歩いてきた。
25歳のひとは四半世紀分の、50歳のひとは半世紀分の物語がある。
のっぺらぼうでは、決してない。
その歴史を、ないがしろにはできない。
 
 
旅人があらわれる。
ゆきたけを尋ねた。
年のめぐりが悪かったのか、防御がとどかなかったのか。
嵐にもまれ、染まりきらなかった、自分という紅葉を嘆いている。
燃えるような赤にも、黄金にもなれなかった。
旅人は、自嘲する。
足もとには滴々と、雫がくだけている。
こうもり傘は、役に立たなかった。
ほおからも、髪からも、雨水をしたたらせている。
だれかから譲りうけた外套はボロボロ、革靴には泥水がしみている。


よくここまで辿りついたね。おめでとう。
きみの四半世紀は、むだにはならない。
あだになんかさせない。
いたずらに過ぎ去った日々なんかじゃ、決してない。
ゆっくりふりかえろう。
さあ、暖炉に近づいて。
薪だよ、火をみるとおちつくだろう。
珈琲でもいかがかね。
ちょうど、けさ焙煎したところだ。
こういうとき、若人は、おとなしく老人のお節介につきあうものさ。
ミルクとシュガーはご入用かな。
すまないね、ここには飲みものしかないんだ。
我慢なんかいらない。自分をたっぷり甘やかすんだ。
しげしげとながめて、どうしたんだい。
そのカップは、博物館に飾られているものと同じらしいね。
前任者がおいていった、お古だけどね。
しまいこんでいては、意味ないからね。
 
 
さあ、つづきをしよう。
きみはどこからきたんだい。
きみを育てたひとは。その上のひとたちは。
どういう系譜をたどってきたんだろう。
どんな子どもだったんだろう。
だいじなことさ。
きみの立ち居ふるまい、スプーンをすくうしぐさ、珈琲のしたたりに、まずいと眉をあげるやりかた、子音の発声の弱々しさ、その口癖、裏にひそむ思いこみ。
答えは、自分の延長線上にしかない。
切り拓くカギは、うしろをふりかえって、自分という線が、どこからどうのびてきたのかを見ることにある。

 
自分は、自分になっていくんだ。
原点に回帰していく。
そのヒントが、きみの歴史にはある。
 
 
若人は、はぜる薪をぼんやりと見やりながら、とつとつと話す。
できごとがいつ起こったのか、どう思ったのか。
ほんとうは、どうしたかったのか。
鮮明に覚えていた。あれは三歳のころ。あれは十七歳のころ。
いつ、何があったのか、特定できた。
若人の四半世紀の道には、そこここに宝石が埋まっている。
あんまり、こわごわ歩いたものだから、つよく踏みしめられている。
 
 
ああ、心配いらない。

スコップ、クワに、ツルハシをもってこよう。
粘土質が多いね、ここで泣いたんだろう。
おびただしい小石に、枯れた雑草がひどい。ここで踏んばったんだろうね。
それは石じゃなくて、宝石だよ。
原石でもないよ、どうしてその輝きがみえないんだろう。
ぬぐったらわかるよ。
これは黒瑪瑙、透輝石、電気石。
黒曜石だって立派な宝石だよ。
黒が好きじゃないのか、しかたないなあ。
あかるい石だって埋まっているよ。
でもそれは、まずこの黒曜石を美しく思えたらだね。
さあ、いっしょに掘りだそう。

6000年の昔から、きみと同じ生きものが、うまれては散っていった。
このあいだに、この生きものは変わってしまったんだろうか。
変わることができたのだろうか。
きみと同じような心をもち、似たような環境に育ち、似たあやまちを犯し、同じよろこびを掲げて、土塊に帰した。
そんなひとは、ほんとうにひとりもいないんだろうか。
染まらなかったきみの紅葉は、きみだけのケースなんだろうか。
そう断じることは、6000年への冒涜じゃないかね。


きみを延長していった先に、きみの未来はある。
うしろをふりかえると、6000年がある。
どうして、迷ったりするんだろう。
そう、未来は、すでにきみの手のなかにある。


きみはそれを、もう知っている。

 

 


・未来「志向」は、好みが未来にあるということ。
・原点「思考」は、過去を考える、過去を思考する。
・すぐ「そもそも」といいだすので、ややうざがられる。
・過去にこだわるので、ややうざがられる。
・原点と内省は、まわりの理解が必要。
・歴史好きが多い。
・社内誌づくりに燃えるが、できたものには興味がない。

 

ストレングス・ファインダー 戦略的思考力
学習欲 原点思考 収集心 戦略性 着想 内省 分析思考 未来志向

 

原点を礼賛しまくった記事はこちら。

 

 

ふだんは本文に、よくないところを混ぜるのですが、よくないところはないので箇条書きに混ぜました。
原点を!もっと!推していきたい!!

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