ふみのや ときわ堂

季感と哀歓、歴史と名残りの雑記帳

エッセイ

まぶたの裏に、夏の特別がある。風の古民家うえみなみレポ。

ふりあおいだ、入道雲。リボンひらめく、麦わらぼうし。そでの丸いワンピース。しずむ夕陽をながめたテトラポッド。神妙に手をつないだ、かえり道。日焼けなんて、どうでもよかった。花火なんて、なくてよかった。 金粉を散らしたようにはじける、早暁の小川…

たたるほど、皇位が近づき、業苦であるほど、たたえられる早良親王。

先日、八所御霊神社でまつられていた、吉備大臣。つまりは吉備真備。 ▼この記事 このひとは、どうして、たたるひとたちに加えられているのか。どう考えても、徳川家康的な人生を送っている。そもそも、御霊メンバーがすごすぎるのだ。このメンバーにどうして…

七福神は、ほんとうに福をもたらしてくれるのか。わりとバイオレンスな神じゃないか。

七福神は、だいぶ謎である。こういう神仏道教の習合したものは、だいたいポリシーが一貫していない。たのしげに、ふくふくしく、ひとつの船におさまっているが、そりはあわなさそうである。ことばも通じなさそうである。どうしてあなたが。あなたの効能は、…

しずんだ甘すぎるチョコレートと、記憶のアメリカンドラム缶

歩いても歩いても、たどりつかない。英語に飽和して、わたしのあたまは、もうなにも溶けない。となりの姉は、読んだ地図どおりにいかなくて、自信をくだかれている。ふたりで、ことば少なに、サンフランシスコをあるく。もとは車社会なのだ。歩いているひと…

シンデレラタイムをすぎてから使う魔法について

わたしたちが幼かったころ、祖父母はすぐ、あがなおうとした。じっと見つめていたり、興味をもったものがあれば、すかさず言った。「ほしいんか」甘い声だった。あわてて首をふる。もの欲しげだったのかと、恥ずかしかった。そんな卑しさを、だしてはいけな…

京セラドームの深夜貸切。4時間20万円。

終電にのって集合する、きわめてヘルシーな、夜あそび。 アリーナに駆けいったとき、野球好きたちが、はっと息をのんだ。息をのんだだけなのに、みずみずしさがこちらまで広がってきた。こころから羨ましかった。強い思い入れが、すこしばかり叶うときの、あ…

競争性と運命思考は、順位が逆にでるのではないかという仮説と、かりそめのゲーム。

競争性は、勝ちたい。現実にめっぽう強い。この現世において、目のまえのあのひとを、ぬきたい。まっしろのテープを切りたい。群をぬきたい。あたまひとつ飛びだしたい。そんな競争性は、おとなげなく子どもにも勝ちにいく。 ということを、小学校の教師をし…

あらゆる快楽、あらゆる褒美、いかなる賛辞にもかなえられない、最後の果実。

わたしは、ひとつの愚を犯しました。いえ、現在進行形です。犯しつづけております。この世における万能感。そう、わたしはなんでもできる。ベッドの上で、天井を見あげながら、この世が手に入る。この耳をつんざき、とどろき、ふるえあがらせる、すさまじい…

乙女心と秋の空と、ハンプティと夏の空。

切なさ向上委員会のみなさま、こんばんは。そうでないみなさま、だんだん委員になりたくなってきたところではないでしょうか。入会金0円。会費も0円。来るもの拒まず、去るもの追わず。会員同士で、ひとくさりの置きてがみを。もちろん手書きです。肉筆で…

金襴緞子の帯しめながら、花嫁御寮はなぜ泣くのか。

読んでいた本に、竹久夢二の詩、「宵待草」がでてきた。ははあ。もうそれだけで染みてくる、きざし。はたして予感は的中した。だよね、わかってる。もちろん旋律を聞きたくなって、宵待草を流した。 待てど暮らせど、来ぬ人を 宵待草のやるせなさ 今宵は月も…

妖怪とゾンビと地蔵盆

8月さいごの週に、地蔵盆がある。晩夏にある。五山の送り火も、お盆もおわったあと、精霊をおくる系の儀式がすべておわったあとに、ひっそりある。いや、ひっそりといっていいのか。夜闇をしのぶという意味では、ひそやかではある。 東京はお稲荷さんが多い…

なんの話だったか、人にはうまれつき優しさは備わってないと、姉がいいだした。

司馬遼太郎の、小学校の教科書むけの文章に、そう書かれていたらしい。あまり意味もなく、姉は、熱弁した。 うまれながらにして、やさしい人はいない。生来、そういうものらしい。おさな児は、酷薄なものだ。残酷ともいえる。痛みにゆがむ顔をみて、へんな顔…

このように死体を発見されたい。

大学図書館の、だれもいない地下の書庫の、古い本のかびくさい香りをかいだとき、「のたれ死ぬならここがいい」と雷撃のごとく思った。 乾いてひんやりした温度に、味気のない、はだかの蛍光灯。節電のためにあいだはぬけていて、うすよごれた殺風景なリノリ…

那由他にかがやく星のなかで、自分にしかみえない星がある。そしてだれもそれを反証できない。

ということを小学5年生のころに読んだ。あふれでる浪漫。かけだしたくなる衝動。未来には、輝かしい栄光しか、待っていない。 あのころ、SFは、夢と希望を、昼ひなたから、雨あられのようにふらせてくれていた。 小学生なので、宇宙人はいるのである。宇宙…

南波照間島と裏切りの精度

どうしよう。後味が、激烈に、悪い。 そんなはずじゃなかったじゃないか。信じてたのに。いままでだいじょうぶだったじゃないか。 主人公が、もうひとりの主人公を裏切った。ははは、なるほど。ドラマティックにきたね。伏線がわかりやすすぎるから、もうひ…

取引先が夜逃げをした。

どうやら逃げたらしい、と、電話口がいった。 びっくりして聞き返した。 逃げたって? 2日に1回、うちの会社にきていた取引先さんが、行方不明になった。どの電話にかけても「現在使われておりません」になる。同業他社さんに聞くと、どうやら破綻したらし…

あたしメリーさん。すこし足が悪いの。

みなさまにご相談があります。 こないだ、夜23時ごろ、いい感じにほろ酔い加減で帰路についておりました。 まだまだ客引きのいる最寄り駅で降りて、若いミニスカ女性も余裕であるいているにぎやかな大通りを北上して、一本、奥に入ります。 そこからはぐっ…