ふみのや ときわ堂

季感と哀歓、歴史と名残りの雑記帳

砂漠の自販機を探す:葬儀場で、遺影を和服に加工して、親族家の数だけ刷る。

ブルーオーシャン。
つまりは、未踏の地。
ただただひろがる、澄んだ青。
激戦の浜辺をぬけた、だれも商売していないところ。
血ぬられた岸辺では、ないところ。
はるかなる大洋。

だたし、このごろは、安価な技術で到達できるので、障壁が低い。
スペイン王族に頼みこみにいかないと、航海できない時代じゃない。
コロンブスが、卵を割ってみせる必要もない。
ちらっと体験して、ちらっとやってみればいいだけ。
すぐに似たものがでてくる。
コロンブスみたいに、命をかける必要もない。
マゼランのように、ほんとに死ぬこともない。

そう、マゼランは死んだ。

話は、現代の葬儀なのである。
親族の葬儀なのであった。
故人は卒寿、デジカメでとった、よさげな写真なんてない。
ほほえんでいる集合写真を、葬儀会社にさしだした。
するとびっくり!
いい感じにひきのばし、
いい感じに背景を消して、
着てもいない和装をさせた遺影ができあがってきた。
A4くらいの大判。
いい仕事!

データをいじるのも、和服をきせるのも、少し知識があればできる。
わたしもやろうと思ったらやれる。
でも、
仕事を休むために引継ぎして、
家族をひきつれ、
親族をよびよせ、
その宿を考えて、
なれぬ場所で起居しているなかで、
「〇〇円でします」といわれたら、たのむ。
だってのどが渇いている。
ここは砂漠。もうライフはゼロ。

しかも、焼き増し、5千円。
葬儀用の一枚はあるので、もってかえって、写真屋におもむいたら、焼き増しはできる。
そっちのが安い。
でも、ここは砂漠。
親族の住処は、てんでばらばら。
ひるがえって、わが身はくたくた。
のどがかわいた。多少高くても、お水がほしい。
ああ、お水。早くのみたい。
あとで郵送することを考えたら、なれぬ場所で疲れている脳は、さらっと5千円をさしだしてしまう。
砂漠でならエビアンにでも、5千円払える。

とはいえ、画像をいじるのは、人間なので、自動販売機ほど、設置したらノータッチでいいしろものではないけれど、いいぐあいの砂漠だなと。

そして、すぐ真似できるので、ブルーオーシャンではないかもしれない。
が、すくなくとも葬儀場でさしだすというのが大きいので、真似できるところも、葬儀場に限られる。

なかなかいい商売だなあと、葬列にあって思ったので、ここにご報告する次第です。
わが家では、いい感じの単独笑顔写真がとれたら、「これ遺影ね」指定してます。

 

▼遺影の額縁をいれてみたら、なんとも通夜通夜しいサムネイルになったので、隠喩程度の画像をさがしてきました。一本下駄とかのほうが雰囲気でたかな。

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