ふみのや ときわ堂

季感と哀歓、歴史と名残りの雑記帳

個別化のものがたり

6時58分発、まえから3両目。
この女性は、いつもしわのないダークスーツ。
濃紺がおそろしく美しい。
折り目がつきにくいのか、着古し感がない。
スーツがまろやかに身に沿っている。
パンプスは5~7センチ。
ダークカラーばかりだけれど、デコラティブなビジューがついている。
からみあわせるように両足を組んでいる。
自分の身を守るかのように。
読んでいる日経新聞は、四角形に折ってある。
あの駅でおりるから、きっとあの金融系会社ではたらいているんだろう。
たまに朝からブラックサンダーを、苛立たしげに、かじっている。
スカーフをまいたかっちりしたバッグに、いくつブラックサンダーを常備しているのだろう。

うすぼんやりした色のスーツの、あの男性。
雨がふるといつも、折りたたみカサから水をしたたらせている。
そういうときはつまらなさそうに、ドア横にたつ。
ぺらぺらのカサは、ぬれると、黒なのか藍なのかわからない。
真夏でも、長袖のカッターシャツ。
うすいから、インナーが透けている。
たまに車内で、部下らしきひとに声をかけられて、あわく会釈している。
部下は、ポロシャツ。
10月までノーネクタイ。
スーパークールビズ適用で、あの駅でおりるから、駅前のあの会社だろう。

おなじ車両にのっているひとは、ほとんど全員、把握している。
どの人も、どの人も、それぞれ、どんな過ごし方をして、どの駅でおりて、どの日にのってこないか、わかっている。
それが趣味だから、疲れるなんてことはない。
たのしくってしかたない。
眼が勝手に追う。
これ以上のレジャーはない。


窮屈な思いをして型にあわせようとするなんて、不幸以外のなんでもない。
ひとは、とんがっていて、ぎざぎざで、あわれなほど、えぐれていたりする。
それがおもしろい。
そこがすばらしい。
だれかの真似なんて、つまらないことやめよう。
どうでもいいこだわりを、肯定していこう。
意味不明、OK。
むだな苦労、OK。
役に立たない発想、OK。
結果として遠まわり、OK。
ひとの生態って、なんて豊富でユニークなんだ。
だれが何をしていたって、べつにいいじゃないか。
生物ってもともとそういうものだ。

まとめる必要がどこにある?
公平とか平等とか、なんのこと?
一様でならないといけないなんて、だれがいった?
好きにすればいいじゃない。
好きにするのが、いちばん活かせる。
あの人は、こう伝えると、大車輪。
あの人は、彼と組んだら、快進撃。
あの人は、あそこにいると、ひとり舞台。
見たらわかるよ、いつだって見てるから。
 
 
暖流と寒流のぶつかるところは、いい漁場になる。
リマン海流。対馬海流。千島海流。日本海流。
寒流が運んできた、ゆたかなプランクトンが、暖流とまざる。
暖流の魚たちは、潤沢な栄養を浴びて、ぐんぐん成長する。
北の海からおりてきた魚たちと、南国からあがってきた魚たちが、ひしめきながら生育するスポットがある。
百花繚乱、これほど無尽の多様はない。

ここは潮目だ。

そう、個別化は、潮目をつくる。

 

 

・人間関係資質のなかでも、思考系に近い。クール。
・変なもの、変な人が好き。だいぶ変なひととも仲よくなれる。
・全体の意見をまとめられるのが調和性、まとめられないのが個別化。
・両方もっていたら、尊重しつつまとめることができる。
・親密性は、このおばあちゃんがつくった雑煮が食べたい。個別化は、雑煮のすさまじい多様性を追求するために、このひとがどんな雑煮をつくるのか知りたい。

 

(私見)
「人間関係資質をぜんぜんもっていないけど、唯一、個別化だけある」というひとをよく見る。

 

ストレングス・ファインダー 人間関係構築力
運命思考 共感性 個別化 親密性 成長促進 調和性 適応性 包含 ポジティブ

 

 「個別化はおもしろがるだけで助けない」と、この記事で書いたら、個別化1位さんに、胸をおさえて「どきりとした」と、お言葉いただきました。おもしろがるだけで助けないそうです。

 

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