七福神は、ほんとうに福をもたらしてくれるのか。わりとバイオレンスな神じゃないか。
七福神は、だいぶ謎である。
こういう神仏道教の習合したものは、だいたいポリシーが一貫していない。
たのしげに、ふくふくしく、ひとつの船におさまっているが、そりはあわなさそうである。
ことばも通じなさそうである。
どうしてあなたが。あなたの効能は、むしろなに。
七福神にしても、六歌仙にしても、チョイスがとても謎なのに、たいして追及もされず、あたかも万人の納得のもとで、信仰されている、冠されている。
両肩をもって、がくがくさせながら、それでいいのかと問い詰めたい。
それで、いいのである。
ほんとうはこの世など、いいかげんなのだ。
時間のながれなんて、伝統なんて、適当なのだ。
信仰なんて、とても厳密であるべきようなものが、この意味不明さ。
そんなものである。
そう、七福神である。
なぜ七福神について言い出したかというと、この話をしたいがためである。
元日の夜に、七福神ののった宝船をえがいた紙を、まくらの下におく。
そうして呪文をとなえる。
長き夜の遠の眠りの皆目覚め、波乗り船の音の良きかな
ながきよのとおのねむりのみなめざめ、なみのりふねのおとのよきかな。
これ、回文。かっこいい。
回文はどうしてこうも、魅惑的なんだろう。
おわりがない回文は、魔を寄せつけないらしい。
なので、肝試しのときに、しりとりをするのも効果的らしい。
この回文のかっこよさを書きたいだけの記事だったので、店じまいをしたいところ、文字数が足りないので、七福神の謎の出自について。
恵比寿。
イザナミ・イザナギの初子で、蛭子(ひるこ)という。
うまれてすぐ、葦の舟にのせて捨てられた。
唐突にひどい。
初子を意図的に死なせる、ということは示唆的である。
とはいえ、このために、海でうちあげられたものは、エビスとあがめられた。
たとえ土左衛門(水死体)であっても。
海からの渡来物は、すべてエビスだった。
万里の波濤のむこうから、たてまつるべき神が漂流してくるのである。
島国らしくて、晴れ晴れする。
そうしてエビスは、いつのまにか、鯛をもって、漁業の神として凱旋することになる。
七福神唯一の、日本由来の神である。
さらには、単品での縁日がある。
実は、神々のなかでは、稼ぎ高が、抜きんでている気がする。
▼縁起よさげなこのひと。
大黒天。
ヒンドゥー教のシヴァ神の化身。
本ブログは、むだにシヴァ神の登場確率が高い。
さあ、みんなで踊ろう。シヴァの踊りを。
▼踊るシヴァ神
みなさまご存知、破壊と再生の神。
密教のまにまに渡来してきた。
天と名がつく時点で、軍神である。
天部は、さほど位は高くなく、剛腕でもって、ひとびとを悟りへ導く。
みんな、憤怒の顔をして、武器をふりまわし、餓鬼をふみつけている。
大黒天の顔は、その名のとおり、おおむね、黒。
もう少し強くいうと、死神に近い。
それがいつのまにか、でっぷりと太り、烏帽子までかぶって、金目のものをたらふくつめた袋を背負いだした。
えびすさんといい、いつのまにかすぎる。
▼潔いまでの、俗物感。
毘沙門天。
四天王のひとり。とてもかっこいい。
戦闘神なので、天部はみんな凛々しいけれど、四天王は群をぬいている。
かの戦国武将、上杉謙信がことのほか愛し、家紋は「毘」だった。
▼どうでもいいけど、このフォントの微妙なクセがいつも気になる。
片手で棍棒、もう一方で、ちっこい塔をもっている。
とはいえ、宝の山にお住いなので、歴とした福の神でもある。
▼きゃー!かっこいい!!
弁財天。
もとは、ヒンドゥー教のサラスヴァティー。
水神である。
そのうち、流れるものとして、弁舌や音楽も司るようになった。
とはいえ、呪詛神としての歴史のほうが長い。
北条政子は江ノ島弁才天に、呪詛の祈願をした。
はたしてそれは叶った。
奥州藤原氏、滅亡。
いまは、おだやかにほほえみながら、琵琶なんぞを抱いている。
▼サラスヴァティ―のほう。弁財天に似てる。めずらしく原型をとどめている。
福禄寿・寿老人。
両方とも、道教の神で、南極星をあらわす。
しれっとでてくるけれど、北極星と違って、南極星といえるものはない。
このふたりは、同一人物ともいわれる。
死者のたましいを救う神である。
▼あたまよさそう。
布袋。
なんと、実在の僧であった。布袋和尚、中国人。
ご利益は、謎。
神道、道教、ヒンドゥー教、仏教ときて、実在の人物をまぜてくる、この剛腕。
▼このフォルムが選抜理由ではないか。
ここまできたところで、この統一感のなさ。
おそらく、共通するところは、現世利益系。
呪詛にせよ、即物的で、効き目が早いものは、それなりの対価を要求する。
必定、神としての位は低くなる。
王道はひとりもいない。
ただ、強い。
現世が苦しければ苦しいほど、庶民は、いまのしあわせを願った。
死後の平安なんて待てない。
極楽浄土なんて遠すぎる。
いますぐほしい。
そうして、バイオレンスな神々が集結するに至った。
こんな、おだやかそうな顔をして。