ふみのや ときわ堂

季感と哀歓、歴史と名残りの雑記帳

五感をゆるがし季感をもたらすロードバイク礼賛

なにしろ、生々しい。
からだをつつむ、風の肌ざわりが。
おなかにひびく、道の感触が。
濃厚な自然のかおりが。
大阪城をめぐる掘りのぐるりを走る。
はじめたころは、夏のかおりが強かった。

 

堀のなかを覆っている黒い森から、虫の声がけたたましく、さわがしい。
こおろぎ、鈴虫、つゆむし、ささきり、きりぎりす。
ギアをきりかえて、ペダルを踏む。
あたりが暴風雨のように、ごうごうと鳴りだし、でっぱった耳に、轟音があつまって、ほとんど音がしない。
虫の声は、聞こえなくなっていく。
空気のかたまりのなかをつっきって、切りわけていくような肌ざわり。とても気持ちいい。
向かいからひたすら吹きかけてくる暴風を、人型でかたぬきするように進む。
からだをひくく、空気抵抗をおさえてひくく。
前傾姿勢がつよくなってくると、四足で走っているような感覚になってくる。
四足で、だれよりもはやく、音がきこえないくらいはやく。
おなかに地面の衝撃がひびく。
アスファルトのざらざらも、段差のへこみも、じかにつたわる。
こわいと思ったらぶれる。
重心を低く。
四足で走る動物のような感覚になる。
自転車の一体感はすさまじい。
錯視をしはじめる。
前を走っているはずのランナーが、手前にすべってくる。
道の両手にならんでいる樹々が、なめらかにうしろにながれていく。

 

そのあたりではっと気づく。
まずい、ここで転ぶと、けがをする。

 

夏のころは、両そでを延々とつづく街路樹の木もれ日が、延々と美しかった。
虫のざわめきが、心地よかった。
しばらくすると、街路樹のイチョウが、ぎんなんの猛烈なかおりを、放ちはじめる。
金色にかがやくイチョウ並木から、ひたすらつづく、フレバーオブぎんなん。
この道をとおったあとの、もう少しいった先にある、中之島のバラ公園のあまやかさといったらない。
薔薇は私よ!ほら、ふりむいて!とばかりの濃密な香りの豊穣。

 

そしてそのあと、ぎんなんは消え、散りはてて、足もとがすべて金色の道に。
金の粉々が、さらさらと流れている道もあれば、葉っぱがぎっしりの道もあり、美しいことこの上ない。

 

というわけで、ロードバイクおすすめです。

 

城って美しいですよね。この城は、緑青がことのほか美しい。黒かったときの大阪城も美しかった。見たことないけど。

童友社 1/350 日本の名城 重要文化財 大阪城 プラモデル S22