鳴くセミよりも 鳴かぬホタルが 身を焦がす
盛夏のセミが暑苦しい候ですが、唐突に、本をご紹介します。時間をまきもどします。いまは6月です。
ホタルを狩りにいくまえに、脳内モードをホタルにきりかえましょう。そうすると、よりいっそうホタル狩りをたのしめます。ちなみにわたしは一度も見たことがありません。
- 秋田街道(宮沢賢治)青空文庫 宮沢賢治 秋田街道
ファンタジーが過ぎて、脈絡どっかいってて、全集を読んでると発狂しそうになる宮沢賢治ですが、やはり美しい。この時代にこの感性。2秒で読めます。
- 蛍(牧野信一) 青空文庫 牧野信一 蛍
大正時代のころ、少女たちの熱狂的支持をえた雑誌「少女」。中原淳一のような耽美でロマンチックな世界観。
「華族女学校(いまの学習院女子部)に通う、華族のおひいさまたちの交遊」はこんなのなんだろうなぁと、読者があこがれる、みたいな図式なんじゃないかと勝手に思っています。少女向けなだけあって、旧仮名遣いなのに読みやすい。やさしいことばの手ざわりをおたのしみください。2秒で読めます。
- 蛍の川(宮本輝)500えんくらい 蛍川・泥の河 (新潮文庫)
芥川作家の代表作のひとつ。情景描写がぞっとするほど美しいのに、けっこうつらい。ただ、ホタルシーンがあまりに美しいので、これを読んでわたしはホタルを見たことに、脳内記憶をすりかえました。
- ほたる(北村透谷)青空文庫 北村透谷 北村透谷詩集
1秒で読めるのでどうぞ。北村透谷は名前の響きからすでに美しい。
- 蛍(織田作之助)青空文庫 織田作之助 螢
あと味の清冽さ。力強さ。短編の名作。これがタダで読めるなんて。寺田屋のお登勢が主人公で、龍馬も少しでてきます。
登勢のリアリズムと、ほたるの刹那性が、おたがいを肯定しあって、身を焦がしながら燃えつきても、何度でも復活する力強さに転化してます。
こどもの感性では、登勢の境遇にばかり目がいって、このよさがわからなかったかなぁと思います。
とりあえず読んで。30分くらいはかかるので、URLから読むよりも、Kindleでダウンロードしたほうがいいかも。