ふみのや ときわ堂

季感と哀歓、歴史と名残りの雑記帳

長崎/異国情緒と文明のモザイク

長崎のどこがよかったって、和風、西洋風、唐風、アジア風の様式がまざりあっているところ。

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▲復元した出島のなかにある、商館。
たたみにアジア風の絨毯が敷いてあって、その上に洋風のテーブルセット、壁紙はあきらかに洋風じゃない。

 

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▲出島の商館。
たたみにベッド、麻っぽいアジアンなベッドカバーに、すだれのかかっている立屏風がうまい具合に和風をはずしてる。

 

 

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▲唐風。お寺なんだけど、東屋がある。

 

 

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▲同じお寺の、瓦や煉瓦やなにかの廃材を再利用してつくった塀で、好まれて写真や絵のモチーフになっているらしいけれど、何風なのか謎。

 

 

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▲かわら屋根に洋風のはずがバンガローっぽくなってるグラバー邸。

において、ドレスをきてよろこんでるわたし。
調子にのって派手なのを選んでしまったけど、もっとおとなしめの19世紀イギリス風のにすればよかった。映画「いつか晴れた日に」みたいなやつ。
友達は、「お客様これから仮面舞踏会ですか?」みたいなドレス着てたけど。
ついでにその友達いわく、ここでの写真は「もうすぐこの国を離れるから、思い出のお屋敷を案内しながらポトガラフィーを撮るわ」っていう設定。
めちゃくちゃたのしいので、行ったらぜひ。500円30分。

妙見山(660m):キリシタンの残光

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主神が北極星!
家紋が、ほとんどクルス!
高山右近の生誕地!
寺社の門構えに、そこここに金字のクルスが型ぬかれている。
これだけそろって、だれがいえるんだろう。
まったくの偶然だなんて。
キリシタンと無関係だなんて。
小説だったら、伏線にしては興ざめなくらい。もうひとひねりくらい、あるだろう。

 

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山の上って、たまにファンタジスタがいる。650万年前の金星から降りたった魔王を祭っている、鞍馬山みたいな。有無をいわせず疑問をはさませない、堂々たる圧がいい。矛盾や異変、ためらいや混濁を内包して、なお超然としている、それが伝統なんじゃないかと思う。しらんけど。

 

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ロンリー下山したんだけど、だれも通らず、座るところもない。
どこまでいっても、渓流ぞいをひたすら下る。
おなかもへってないし、のどもかわかないし、つかれてもいない。
だけどなんだか、飽いてきた。
ここいらで座って、なにかおなかにいれよう。
ひとりぼっちで、ぼんやりひえたサンドイッチをむさぼる。
足をぷらぷらさせながら、見るともなく小川をみていた。
自分と、セブンイレブンの冷たいサンドイッチと、岩と水だけだった。
はげしく水のはじけくだる、渓流の音だけが響く。
そこで頭蓋をつらぬく確信。
食べるということは、こういうことだ。

 

 

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まぁ、ヒルトンプラザで、何杯目かわからない、薄い紅茶を流しこみながら、3段のアフタヌーンティーセットを、けだるい感じでかじるのも大好きだけど。話しているのか食べているのか、話すために食べているのか、食べるために話しているのかあいまいな、あのブルジョワな感じ。

 

登り1000-1230上杉尾根コース
下り1230-1410初谷渓谷コース
北辰といえば北辰一刀流

五感をゆるがし季感をもたらすロードバイク礼賛

なにしろ、生々しい。
からだをつつむ、風の肌ざわりが。
おなかにひびく、道の感触が。
濃厚な自然のかおりが。
大阪城をめぐる掘りのぐるりを走る。
はじめたころは、夏のかおりが強かった。

 

堀のなかを覆っている黒い森から、虫の声がけたたましく、さわがしい。
こおろぎ、鈴虫、つゆむし、ささきり、きりぎりす。
ギアをきりかえて、ペダルを踏む。
あたりが暴風雨のように、ごうごうと鳴りだし、でっぱった耳に、轟音があつまって、ほとんど音がしない。
虫の声は、聞こえなくなっていく。
空気のかたまりのなかをつっきって、切りわけていくような肌ざわり。とても気持ちいい。
向かいからひたすら吹きかけてくる暴風を、人型でかたぬきするように進む。
からだをひくく、空気抵抗をおさえてひくく。
前傾姿勢がつよくなってくると、四足で走っているような感覚になってくる。
四足で、だれよりもはやく、音がきこえないくらいはやく。
おなかに地面の衝撃がひびく。
アスファルトのざらざらも、段差のへこみも、じかにつたわる。
こわいと思ったらぶれる。
重心を低く。
四足で走る動物のような感覚になる。
自転車の一体感はすさまじい。
錯視をしはじめる。
前を走っているはずのランナーが、手前にすべってくる。
道の両手にならんでいる樹々が、なめらかにうしろにながれていく。

 

そのあたりではっと気づく。
まずい、ここで転ぶと、けがをする。

 

夏のころは、両そでを延々とつづく街路樹の木もれ日が、延々と美しかった。
虫のざわめきが、心地よかった。
しばらくすると、街路樹のイチョウが、ぎんなんの猛烈なかおりを、放ちはじめる。
金色にかがやくイチョウ並木から、ひたすらつづく、フレバーオブぎんなん。
この道をとおったあとの、もう少しいった先にある、中之島のバラ公園のあまやかさといったらない。
薔薇は私よ!ほら、ふりむいて!とばかりの濃密な香りの豊穣。

 

そしてそのあと、ぎんなんは消え、散りはてて、足もとがすべて金色の道に。
金の粉々が、さらさらと流れている道もあれば、葉っぱがぎっしりの道もあり、美しいことこの上ない。

 

というわけで、ロードバイクおすすめです。

 

城って美しいですよね。この城は、緑青がことのほか美しい。黒かったときの大阪城も美しかった。見たことないけど。

童友社 1/350 日本の名城 重要文化財 大阪城 プラモデル S22

 

 

長崎/みんな大好き坂本龍馬

長崎は、龍馬好き。
実物の3倍くらいの大きさの龍馬像が、長崎歴史文化博物館の玄関入ってすぐに迎えてくれる。ランタンフェスティバルでも龍馬とおりょうの縁結びのスポットがあった。そりゃ高知も、高知龍馬空港になるよねってくらいの、龍馬人気。
生きてるうちにリターンのなかった人は、死してのちに伝説化するのか。ゴッホ的な。早世しただけで、金持ちの次男坊だったけど。

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▲亀山社中のあと。
ここだと言われていたところを掘り起こして、遺構を見つけて、伝聞からまっさらに亀山社中を復元してる。なかに飾ってあるものも複製。

 

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▲若宮稲荷神社。
亀山社中のごく近くにあるから、勤皇稲荷神社とも。
拝殿の奥が岩なりにあがっていってる。
亀山社中とこことで、強く印象にのこったのは、複製されたものや、ちょっとぞっとしたお稲荷さんでもなかった。
急な坂道をのぼって、「わざわざここに建物をたてなくても」と思うような、せまく急な土地にあったということと、かなりの高台だから長崎市内を一望できるということ。
毎日みる風景って、どれくらい、ひとの心象風景に影響があるんだろう。

 

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▲龍馬コーヒーと、海援隊カステラと、一番おいしいと思ったチーズカステラ。

龍馬コーヒーは幕末のころの輸入国のものを、幕末当時のひき方でひいたもの。焦げくさいのに、苦みのない、飲みやすいコーヒー。
海援隊カステラは、口のなかの水分を根こそぎもっていく系の当時のカステイラを期待していたら、甘さあっさりの、ふつうにおいしいカステラだった。

清風堂のチーズカステラは、チーズケーキのような味わい。
カステラ屋さんは試食させてくれるところが多くて、すべてを食べた我が舌がはじきだした、長崎市内一おいしい味。
友達が買ってた、長崎駅のモールで売ってる生カステラもおいしそうだった。

 

ところで、東山手洋風住宅群のなかに、なぜか龍馬パネルがあった。
この住宅群に1ナノも関係ない龍馬パネルを、当然のようにほりこむ龍馬熱っぷり。
龍馬パネルは、この旅で4枚は見た。
ついでに、住宅群は賃貸住宅だったらしく、あとでみたグラバー邸との格差がせつなかった。
古民家好きだから、なめるようにみてたんだけど、間取りや窓の配置がふしぎで、ベッドがどの部屋にも置けそうになかった。どこに置いてたんだ。

長崎/軍艦島:ほろびのパレルモの浅いささくれ

廃墟美。

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戦前に炭坑の島として、栄えに栄え、東京以上の人口密度を誇り、のちに無人島となってから、野ざらしになった廃墟の島。
荒廃してゆくものの滅びの美学。

 

らしいんだけど、ハケで一直線にぬったような青空だから、悲壮感がゼロだった。
あんまり雲ひとつないから、イタリアのパレルモの空のようだなと思った。行ったことないけど。
横を歩いてたともだちは、ギリシャの古代遺跡のようだといってた。彼女も行ったことないけど。

 

どこも壊していないのに、風雨だけでこうなったらしい。
木製のものは、なにひとつ残っていなかった。
あまり眺めていると、ささくれ立ってくる気もする。

 

このときとった写真は、
・近代的廃墟
・平和そうに笑顔でピースをしている旅行者
・空はコバルト色の絵の具でこの上なくまっさお
という、なかなかなしろものでした。

 

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金勝アルプス(滋賀県・605m):絶景アスレチック

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絶景


絶景

 という感じだった。最高。
 ケモノ道というか修行道というかアドベンチャーというか、あらあらしい道で、始終たのしくてしかたなかった。野を駆け、山を走り回る。ひとの野生がでてくるというか、童心が呼びもどされるというか。なんだか、登ったり下りたりしているだけで、めちゃくちゃたのしい。
 いちばん高いところで600メートル台なので、低いのにアスレチックがたのしめる。だいぶゼーゼーいってたけど。
 
 もうちょっと詳細を。ルートは上桐生からスタート。

 まず、ひとっこひとりいない。雨予報のおかげか、だれにもすれちがわない。前日の雨のおかげで、森林の芳香がアロマテラピーのごとくあたりを包み、足もとはほどよく手の入ったハイキングロード。沢をわたり、橋を越え、充満する森林感。はじめの見どころの落ヶ滝はみごとで、このあたりまでは道が道である。
 
 そのうち、道と道でないところと道らしきところがあやしくなっていく。ひとっこひとりいないから、ついていく人もいない。目の前には、3つの分岐。どれも道のようで道らしくなく道っぽい。はためく黄色いリボン。さて、どれだ。
 
 落ヶ滝線から天狗岩までは、岩をのぼり絶景、またとなりの岩をのぼり、絶景。
 岩、絶景、岩、絶景。
 だんだん絶景慣れしてきて、カメラもとりださない。はじめはこわがってた断崖も、だんだん広くみえてくる。峰と峰を縦走する。左右が崖の道をあるきながら同行者が、「万里の長城みたい。いったことないけど」といっていた。そんな気もする、いったことないけど。
 
 山頂らしきところにいかなかったので、天狗岩を、いただきだということにした。
 これがこわい。なかなか日常では感じない、まぎれもないこの感情。自然に感じる命の危機。まさに恐懼。あたまからインク瓶をこぼしたように一瞬で染めていく、赤いおそれ。一種のみずみずしさのあるふるえ。こわがってる自分にぞくぞくする。変態か。
 海外でやったバンジージャンプはちっともこわくなかったのに、岩にはりつく妖怪と化した。恐怖という名はこの感情のためにあるのだと、ゆるがず思える、非日常。
 
 くだりの天狗岩線・水晶谷線は、所要時間が短そうだったから選んだら、とんだケモノ道だった。ロープやクサリをつたっておりる。そのうち、ロープもなくなっていく。なんでや。ペグだけ打ってある。シダの繁茂で道がみえない。前をゆく同行者が消える。
 
 
 またいきたい。何度でもいきたい(´▽`)


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1020上桐生~落ヶ滝線~天狗岩(ランチ)~耳岩~天狗岩線~水晶谷線~逆さ観音~オランダ堰堤~上桐生1620~草津の温泉~ネパール料理